猫のいいところ
猫のどこがいいか。
わがままだ、なつかない、凶暴だなどと言われるが、それも裏を返せば褒め言葉だ。
猫への想い、それは自然への畏敬の念に近い。
まず、基本デザインが美しい。
全体的に流線型を描く無駄のないフォルム。
身体もしなやかで、尻尾の優雅な長さと動き。
目が大きく、大きな耳とあいまってDNAレベルで感じる可愛さ。
目はビー玉の様に透明で緑色に深く輝き、ナチュラルにアイラインがある。
手の丸っこさとピンクの肉球。
鋭利さを持った爪のカーブ。
毛のしなやかさとお腹のたるみ。
猫は強い。
普段は甘噛や、爪を出さない猫パンチや、人の上を踏んで歩く等の手加減をしてくれているが、本気になったらひとたまりもない。
縫うような怪我をするし、急所を狙われたら命にかかわるだろう。
踏んで歩くのは、信頼してるからわざと踏むのだ。
そして、顔は踏んではいけないと一応配慮してくれているのだ。
たまに何かに夢中になって走っていく時に踏まれるけど。
うちの猫は生後数日で拾われ、他の猫と触れ合ったことがない。
なのに、うまれつきインストールされているプログラムが優秀で、教えてもないのに毛づくろいをするし、トイレで砂もかくし、要望に合わせて多様なニャーを発して飼い主を操る。
トイレといえば、人間は生後数年経ってやっとコントロールできるようになるのに対して、猫のなんと早いことか。
トイレは2回くらいで覚えた。天才か。
猫との生活は野生の生き物と暮らしているような、ワクワク感がある。
間近で、いくらでも見せてくれる。
近くにいるようで、重ならない。
とりあえずここにいるけど、本気では信用してないよ、って言っているみたいなもどかしさ。
それでいて余裕のある時にはなんの遠慮もなく傲慢に甘えてくる。
仰向けに布団で寝ているときなんて、野生はどこに置いてきたんだろうと思う。
甘えてるんじゃない、暖をとっているんだにゃ!
さて、うちの猫は糖尿病を抱えていて、毎日朝晩インスリンを打たないと暮らせない体である。
朝晩注射しないと行きていけませんというのは、実際かなり大変なわけで、しかもその命綱は頼りない同居人2人の手にかかっている。
そんなギリギリの状況で、本人は至ってのほほんと暮らしている。
もちろん猫は分からないからといえばそれまでだが、なんか毎日注射してくるな、とはさすがに思っているはずだ。
最初は若干怒っていたが、ご飯のタイミングで注射するので、最近は協力的ですらある。
「今」お腹がすいている、「今」しんどい、痛い、怖い。
今が悪くなければ、猫は悠然としている。
先のことを考えてくよくよしたりしない。
なんで病気になったのか、親の遺伝かもしれない。
そもそも親の顔を知らない。兄弟がいるのかも分からない。
それでも毎日、平和に生きている。それが猫。